遺伝子群は、細胞の表面に遺伝情報に応じたタンパク質を作り出す働きがあり、他人の体内に入ると、免疫系に対する抗原となって排除の対象となってしまう。
このとき非自己度(異物度)が高いほど強い抗原となって、リンパ球などの免疫細胞から猛烈な拒絶を受け、他方、自己に近い形であるほど抗原性が低いため、免疫系の反応は弱くてすむ。
このような仕組みが拒絶反応の正体であることがわかり、抗原性にかかわる遺伝子を「免疫応答遺伝子」と呼ぶようになったのは、まだ最近のことである。
免疫に関与する白血球の性質を表わすことにもなるため、″白血球の血液型″ともいわれるHLA領域は、およそ400万の塩基によって構成されている。
まだ全配列が読まれていないため、前述のヒトゲノム計画の主要ターゲットでもあるのだが、移植にあたって検査すべき遺伝子部分の見当はすでについている。
HLA領域にあるA、B、Cという3部分と、DP、DQ、DRと区分される3部分、あわせて6か所の遺伝子部分のタイプが適合性において問題となる。
しかも6つの遺伝子には、それぞれ数種類から数十種類のパターンがあるため、HLAをタイプ分けするとなると全組み合わせを考えることになり、その数は全部で11万種類にもおよぶ。
そんなことから、HLAのタイプが100パーセント合致して拒絶反応の心配がまったくないケースは、遺伝子がそっくり同じである一卵性双生児を除いては、ほとんど不可能といえるほど考えにくい。
各種の臓器移植のなかでも、免疫系に直接関係してくる骨髄移植は拒絶反応の激しさで知られ、6つのHLA遺伝子のうち1つでも異なると、成功率は半分になるといわれる。
骨髄バンクを作って、日常的に登録者を確保しておこうという運動が起こるのも、このような厳しい事情があるからである。
先にADA欠損症の遺伝子治療について説明したとき、正常な機能のリンパ球を作るためには骨髄移植という方法もあると紹介しながら、実際には親子でも成功率が低いと書いたのを思い出してほしい。
このHLA適性の難しさから、骨髄移植を断念して、遺伝子治療に踏み切ったのである。
また他の臓器移植を考えても、優秀な免疫抑制剤の開発に力を注いだり、遺伝子操作による免疫抑制技術の開発に熱心になる必要があるのも、このHLAが存在するためなのである。
ところで、この「HLAのタイプによって特定の抗原に対する免疫反応が決まる」ことなどから、HLAのタイプによってかかりやすい病気が異なることも明らかになってきている。
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